遷延性意識障害と脳死

遷延性意識障害=植物状態

遷延性意識障害とは、昔でいうところの「植物状態」です。

この植物状態は、遷延意識障害を表す英語の「vegetable state」を直訳したもので、長い間日本で使われていたため、こちらの方が聞きなじみがある方が多いかもしれません。

 

この遷延性意識障害に似た症状に、脳死と言う状態があります。

脳死は臓器移植のニュースで度々使われている言葉であるため、「言葉だけは知っている」と言った人も多いのではないのでしょうか?

 

どちらも一見自分では動けず、意思表示もできないため同じように思えますが、医学的に見ると違います。

 

■遷延性意識障害と脳死の違い

同じように見える遷延性意識障害と脳死ですが、基準が明確にあります。

 

脳死と言うのは文字通り「脳機能の死」ですので、脳波は平たんで、自分で呼吸することが出来ず、こん睡状態が続いている状態を指します。

そのため、脳死の場合人工呼吸器を外すとすぐに亡くなってしまいます。

 

しかし、遷延性意識障害は脳波はありますし、自分で呼吸することもできます。

場合によってはきちんと朝に起きて夜に眠るというケースもあり、「ちゃんと意識を持って生きているけれども、身体が動かず言葉が発せないため、意思表示が出来ない」という状態なのです。

ですので、点滴や胃ろうなどで栄養の摂取をし、健康状態に気を配れば生き続けることが出来ます。

 

遷延性意識障害となられた方の中には、少しずつ回復されて意識の疎通が出来たり、意味のある言葉を発することが出来るようになったりと改善した例もあります。

身内が遷延性意識障害となるとどうしても悲観しがちとなりますが、「どんなに辛くても生きているんだから。」と思うことが大切かもしれません。

 

■遷延性意識障害からの脳死

遷延性意識障害から脳死になる事があるかと言うと、限りなくNOに近いです。

 

先述したとおり、遷延性意識障害と脳死は明確に違いますので、入院などをしていて医療保護を受けている状態や、自宅であっても医療従事者から適切な指導を受けて日常的なケアを行っている場合には、脳死となる事はありません。

 

脳梗塞など遷延性意識障害とは別の病気が起因して、脳死となる事があるかもしれませんが、これは健常者でも起こりうることなので、遷延性意識障害の患者が特別なわけではありません。

 

そのため、「遷延性意識障害の患者は長生きできない。」と心無い言葉を言う、保険会社もありますが、事実ではありません。

このような発言は、「遷延性意識障害の患者の寿命を短く見積もって、保険金の支払いを減らそう。」との思惑があるためで、最高裁判所の「遷延性意識障害の患者であっても、平均余命の計算をするべき」の判決にも反するものなので、正しくないと言えます。

 

■脳死の判定

交通事故で脳に大きなダメージを負った場合、患者の多くは意識不明となります。

事故直後から脳波が平たんとなり脳死と判断される場合もありますが、症状が安定せず脳波が乱れていることがあります。

この場合には快方に向かうか、脳死となってしまうかは医師でも判断が難しいと言えます。

 

そのため、明らかに脳波がフラットとなり脳死と判断できるケースを除いては、体のほかの傷の治療を進めながら、脳波を注意深く観察していくこととなります。

ですので、事故直後に「意識がないと言うことですが、ずっとこのままなのですか?」と問うたとしても、確実な返事が出来る医師はほとんどいないはずです。

 

脳死の判定には厳正な基準が設けられていて、判断を下す医師も慎重を期するため、数時間~数日、脳死と判断するのに時間が必要となる事もあります。

ページの先頭へ