脳死との違いとは?
一般市民の間では、遷延性意識障害(植物状態)と脳死を混同されていることが、しばしば見受けられます。
しかし、これらは大きく異なり、明確に区別する必要があります。
このページでは、遷延性意識障害と脳死との違いについて説明します。
遷延性意識障害は意識がない状態、脳死は人の死
遷延性意識障害は、俗に言う植物状態ですが、大脳の機能が廃絶していても脳幹部は健常であり、呼吸や循環等の機能は保持されています。
なので、たとえ昏睡状態であったとしても、適切な治療や介護、栄養さえ補給すれば生命を維持することができます。
一方、脳死は脳幹機能が廃絶し回復不能となった状態で、呼吸や循環等の機能が損傷しています。
ですので、自力で呼吸したり、循環を保ったりすることができません。
放置すれば、早晩心臓も呼吸も停止してしまいます。
また、人工呼吸器によって呼吸を補助し、見かけ上、生命活動を維持しているような状態を作り出すことも可能です。
昇圧剤によって心臓を無理矢理動かして、血圧を保つことで生命を保つことが出来ます。しかし、それも長くは続きません。
そして、脳死は「人の死」であると認められています。
脳死による死と遷延性意識障害による死の違い
脳死と医師が判定すると、多くの場合は生命維持装置を外すかの決断を家族に促します。
脳死は生命維持装置をしていても長くはもたないため、人によっては「主人は普段から、生命維持装置を付けてまで生きたくないと言っていたので、お願いします…。」と言うこともあれば、「一秒でも長く生かしてください。」と懇願する家族もいます。
厳しい言い方ですが脳死は死であるので、人や医学の力で長期間命をつなぎとめておくことはできません。
しかし、遷延性意識障害は脳死とは根本的に違います。
極論を言うと体が動かないだけで脳は生きていますので、自発呼吸もできますし、生命維持ができる栄養素が補給できれば生き続けることができます。
もし何らかの方法で意思の疎通が図れるのであれば、健常者と何ら変わりなく会話を楽しむことができるかも知れません。
ですので、遷延性意識障害が遠因となって死亡することはあっても、症状が安定した後に遷延性意識障害が直接的に死亡の原因とはなることは少ないです。
遷延性意識障害を起因とする死亡原因には、食事や痰などの誤嚥による窒息、また誤嚥による肺炎やインフルエンザの発症、胃ろうなどによる感染症。
動かないことによる慢性的な内臓疾患、便秘による腸閉塞などがあり、中には老衰で亡くなる遷延性意識障害の患者の方もいます。
つまり、ほとんどの場合は注意深く異変を見逃さないように介護を行ったり、毎日リハビリを行うことにより、防げることが大半を占めます。
そのため、遷延性意識障害の患者の家族の方が、「延命治療をしないでください。」と申し出ても、ほとんどの医師は終末期医療を行います。
日本では尊厳死が認められておらず、場合によっては殺人罪が適用されてしまうというリスクがあることが一因となっています。
香川・高松で遷延性意識障害でお悩みの方は、当弁護士までご相談ください。
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